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Educe Club Newsのバックナンバー


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 『Educe Club News』【第12号】ハングリー精神
                            発行:2012.9.25
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 皆様には、今後も継続的にメールマガジンをお送りさせていただきたいと思い
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 本メールマガジンでは、人材育成や教育研修に関するテーマを中心に、人材育
成・教育研修についての最新トピックス、弊社の提唱する「教えない教育」の理
論や実践方法、教育研修の品質(効果)の測定・評価、OJTの活性化等、人材育
成プロフェッショナルの皆様に、役に立つ情報を配信していきます。

 また、将来的には本メールマガジンをメンバー(読者)相互の情報交換の場と
するとともに、いずれはメンバーがFace to Faceで、これからの人材育成や、教
育研修のあり方や方法等について議論し、助言し合い、相互研鑽するコミュニテ
ィ『Educe Club』に成長させたいとも考えています。

 本メールマガジンは、無料で月1回を目処にお届けしていく予定ですので、
末永くお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。

                       『Educe Club News』事務局


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 目 次
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  ■ 『Educe Club News』
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 【1】 ハングリー精神
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 【2】 示す?
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 【1】 ハングリー精神
                 教育エンジニアリング研究所 木村 利明
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 2010年末にPISA(学習達成度調査)の結果が公表されました。OECD(経済協力
開発機構)が2000年に始めた15歳年齢(日本では高校一年生)を対象とした学力
テストです。3年毎に実施されるのですが、その4回目(2009年)の結果が発表に
なったということです。
 65カ国・地域が参加したのですが、その中で、今回PISAテストに初参加した上
海が、「読解力」「数学的応用力」「科学的応用力」の三分野いずれもダントツ
の成績1位を独占しました。

 中国全体の学力ではないのだから不公平だ…などという声も聞こえてきそうで
すが、もともと国だけでなく地域の参加も認めているのですから、それを言って
も詮無いことですよね。問題は、なぜ上海なのか?…じゃないでしょうか。

 まず、どのくらい上海がダントツだったかを確認してみましょう。

■読解力…1位上海556点、2位韓国539点、3位フィンランド536点。
■数学的応用力…1位上海600点、2位シンガポール562点、3位香港555点。
■科学的応用力…1位上海575点、2位フィンランド554点、3位香港549点。

 1位と2位の差はそれぞれ17点・38点・21点、2位と3位の差はそれぞれ3点・7点・
5点です。4位以下の差も似たり寄ったりでいずれも1桁台です。
 上海がぶっちぎりのトップだったことはこの数字だけでも分かりますよね。
 
この結果が新聞紙上に発表されたときは、日本の順位がどうだったという記事ば
かりで、なぜ上海が?…という解説や分析はほとんどなかったと思います。

 ちなみに日本のPISAテストの順位結果(これまでの経緯)はこうです。

 1回目(2000年)→2回目(2003年)→3回目(2006年)→4回目(2009年)
■読解力…8位→14位→15位→8位
■数学的応用力(リテラシー)…1位→6位→10位→9位
■科学的応用力(リテラシー)…2位→2位→6位→5位

 1回目(2000年)はまずまずだったのに、2回目でガクンと成績が下がり(いわ
ゆる「PISAショック」)、あわてて文科省が「ゆとり教育」の見直しにかかり、
授業時間数や授業内容を増加させると同時に、全国一斉学力テストの実施など、
対応におおわらわになったことはご存知の方も多いかと思います。ま、4回目で
少し持ち直して、文科省はややひと安心…といったところですかね。

 ここから本題に入りますが、なぜ上海がトップ?…の答えとしては、「勢い」
があるからの一言でしょうね。そして、その勢いの源になっているのが「ハング
リー精神」です。数年前、私も実際に上海に行きましたが、街中に溢れる想像以
上の「活気」にビックリした覚えがあります。
 なかでも感心したのは、上海で子育てをする親御さんたちの猛烈な「教育熱」
です。子を持つ親たちは「良い教育を与えれば、子どもはきっと豊かになれる」
という強い信念を持っていました。現在もそれは継続中のはずです。
全体として競争意識が強く、高学歴が自分の人生を勝ち組に導くという考えを誰
もが持っている…それがそのままPISAの成績に反映されたのでしょう。
 
 日本にもそういう時期がありました。高度経済成長時代です。それまで貧乏だ
った日本が外国に追いつくために、必死に働き、必死に勉強した時代です。
 その当時の日本人は皆多かれ少なかれ「ハングリー精神」を持っていました。
自分や家族が豊かになるためには、少しでも良い学校に行き、できるだけ名の知
れた大きな会社に就職する…それが国民大半の共通価値観だったわけです。
 したがって、自ら学習するのは当り前であり、そこに他人からとやかく言われ
る必要はなく、極論すれば、学校の教育方針がどうであろうが、先生の教え方が
下手であろうが、委細かまわず自発的に勉強し、成績を上げていく。そういう人
たちが大勢いたのです。彼らが日本の急激な経済成長を支えました。
 もし1960~70年代にPISAテストがあったら、当時の日本は、現在の上海よりも、
もっとダントツな成績を示すことができたかも知れません。

 その「ハングリー精神」なるものが現在の日本にあるのか…というと、残念な
がらありません(と、あっさり断言してしまいます)。
 皮肉なことに、それは、これまで頑張った人たち(もう大半が熟年・老年層で
す)が、日本を豊かにしてしまったからなのですね。誰が悪いわけでもありませ
ん。最近の若い奴らにはハングリー精神がない、と嘆く声をよく耳にしますが、
それも若者たちの責任ではありません。ある意味、歴史の必然なのです。

 新人研修の始まる前に、「なんとか彼らにハングリー精神を叩き込んでほしい」
というリクエストをいただくことが多くなりました。その場合、口頭では「なん
とか努力してみます」とお応えすることにしていますが、実際問題としては、ほ
とんどそれは不可能なのです。
 ハングリー精神があれば、学習や仕事に対する強力な動機付けになることは間
違いありません。しかし、これは報酬や罰則などの(他者から与えられる)「外
発的動機」ではなく、あくまでも、自分の心の中に生まれる「内発的動機」なの
です。それを他者がどうこうできる可能性はほとんどないと言ってよいでしょう。

 日本など、一度ブッつぶれてしまえばよいのだ。そうすれば、ハングリー精神
が蘇って、また素晴らしい日本になる。…これは(悲しいほどの)正論ですね。
 でも、今ここに生きている私たちとしては、それを座して待つというわけには
いきません。なんとか、若者たちに学習や仕事に対する「やる気」を持ってもら
い、国力としての「勢い」を回復させなければなりません。

根源的な人間の欲求である「内発的動機」を生み出すものは「ハングリー精神」
の他に、実はもう一つあるのです。…それは「知的好奇心」です。
 次回は、この「知的好奇心」をテーマに筆を進めてみたいと思います。


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 【2】 示す?
                  教育エンジニアリング研究所 尾関 昇
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 数年前からとある私立高校の教師をしている私の友人が新任当時に先輩教師か
ら最初に教えられたことが「絶対に謝らないこと」だそうです。友人から聞いた
ときは思わず、飲んでいるアイスコーヒーを吹き出しそうになり「はぁ?」と素
っ頓狂な声を上げてしまいました。時に「ゆとり教育」が見直され、「生きる力」
を育成するために道徳など強化していこうとするこのご時世に、何を言い出した
のかと。当然ながら、友人も驚いたそうです。で、実践しているのか?と尋ねた
ところ、「No」と即答したので安心したものです。

 理由は「生徒に嘗められないように威厳を示す。」ためだそうです。呆れて返
す言葉もありません。そもそも、威厳なんてものは他人が感じる部分であり、自
分から演出しても虚勢にしかならないと私は思っています。教師と生徒…つまり
「教える者と教わる者」というイメージから主従関係に結びつけ、主である以上
は威厳を持っていなければならないという理想を持っているのでしょう。確かに、
感受性豊かな成長期であり、躾という面ではこのような演出はごく僅かながら効
果があると思えなくもありません。しかし、「明らかに自分が悪いのに絶対に謝
らない大人」を見て生徒のためになるかといえば答えは明白だと思います。道徳
としても、正しいことや間違っていることをしっかりと判断できる姿を示すべき
だと思うのですが、どうやら現場では古い固定観念が根強く残っているようです。

 2011年FIFA女子ワールドカップ優勝という快挙を成し遂げ、つい最近ではロン
ドン五輪でも銀メダルという成果を上げたサッカー日本女子代表「なでしこジャ
パン」。いきなり話が飛びましたが、この「なでしこジャパン」の佐々木監督は
著書の中でこんなことを書いています。

 「いつでも選手と同じ目の高さで、「横から目線」で接している。」

 監督というイメージから連想する“目上の人”ということをあえて強調するこ
となく、等身大の人間として選手と接することで風通しの良いチーム、選手との
信頼関係を築いているのです。もちろん、これが教育の現場の指導者としての在
るべき姿とは言いません。ですが、前述したように間違った姿を示す指導者より
も同じ目線で会話し、分かち合える指導者のほうが生徒からの信頼を得られると
思います。しかしながら、ただ単に接し方が違うだけでは世界に通用するプレー
ヤーを育成することはできません。佐々木監督は「示す」だけではなく、「答え
を示さない」こともしています。

 「伸び盛りの選手たちにとって、答えは自らピッチ上で見つけなければ意味が
ない。」

 監督から指示を出すことは簡単ですが、あえて「答えを示さない」ことで、選
手自らの「気付き」を重視し、自分で考えさせることを中心に育成をしているの
です。それだけではなく、ミーティングやトレーニングなども監督主導ではなく、
選手主導で自分たちで考えて実施させています。なんだかワールドカップ優勝は
奇跡でもなく、当然のように思えるのは私だけでしょうか。

 「教える」の英単語である「teach」の語源は諸説ありますが、その一つに
「示す」という意味があります。昔から「子は親を見て育つ」と言いますが、正
しい姿を示すことも教師、指導者の仕事ということです。そして「示さない」こ
とも。「なでしこジャパン」は日本女子サッカーの強さを世界に示しましたが、
教育についても本当に必要なことを我々に示しているのではないでしょうか。


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