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Educe Club Newsのバックナンバー


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 『Educe Club News』【第11号】お風呂に 3時間つかると水になる 下の方だけ
                            発行:2012.8.31
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 このメールマガジンは、教育エンジニアリング研究所及びアイボスのサービス
をご利用いただいたことのある皆様、各社が主催・共催したセミナー等にご参加
いただいた皆様、各社の担当者が名刺交換させていただいた皆様にお送りしてい
ます。
 皆様には、今後も継続的にメールマガジンをお送りさせていただきたいと思い
ますので、ぜひご愛読くださいますようお願い申し上げます。
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お手数ですが文末のご案内をご覧ください。

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 皆さん、こんにちは。

 本メールマガジンでは、人材育成や教育研修に関するテーマを中心に、人材育
成・教育研修についての最新トピックス、弊社の提唱する「教えない教育」の理
論や実践方法、教育研修の品質(効果)の測定・評価、OJTの活性化等、人材育
成プロフェッショナルの皆様に、役に立つ情報を配信していきます。

 また、将来的には本メールマガジンをメンバー(読者)相互の情報交換の場と
するとともに、いずれはメンバーがFace to Faceで、これからの人材育成や、教
育研修のあり方や方法等について議論し、助言し合い、相互研鑽するコミュニテ
ィ『Educe Club』に成長させたいとも考えています。

 本メールマガジンは、無料で月1回を目処にお届けしていく予定ですので、
末永くお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。

                       『Educe Club News』事務局


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 目 次
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  ■ 『Educe Club News』
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 【1】 「お風呂に 3時間つかると水になる 下の方だけ」
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 【2】 一期一会(おもてなしの心)
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 【1】 「お風呂に 3時間つかると水になる 下の方だけ」
                 教育エンジニアリング研究所 原田 一敏
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 本メールマガジンでも折に触れ紹介していますが、私どもの研修はPBLという
形態を中心に展開しています。「講師が何かを教え、学習者がそれを学ぶ(覚え
る)」というかたちではなく、学習者同士でプロジェクトを組み、問題解決に取
り組んでいくという形態です。ですから、メールマガジン第5号で「指揮の秘訣」
として述べたように、講師はそれをマネジメントするという役割を負うわけです。
 もちろん、学習目標やテーマ、学習要素はある範囲が決まっていますが、そう
いった形式で学習を進めていくと、当然のことながら「何を学ぶことができたか」
という学習成果が学習者それぞれで異なるという状況になっていきます。実践的
な問題解決の中で学んでいくのですから、学習者個々が学びに対してより主体的
に関わっていくことになります。それによって、必然的に学習者がそれぞれ独自
の学びを得るということにつながっていくのです。ここまでいってはじめて、真
に「学んだ」ということになるのではないでしょうか。講師の教える事を学習者
が一様に学ぶというスタイルであればそうはいきません。

 「何をいかに学んだか」ということが学習者間で異なりますから、講師はそれ
を適切に把握する必要があります。そのために私どもの研修で実施しているのが
「講座内容確認シート」という一種のアンケートです。毎日、学習の最後に時間
をとって、その日の理解度や満足度などとともに、何を学んだかということを記
入してもらうわけです。このシートは、講師が学習状況を把握するためのツール
なのですが、学習者の学びにとっても、大きな意味をもっています。

 さて、表題の「お風呂に 3時間つかると水になる 下の方だけ」というのも、
学習者が実際に書いたコメントなのです。いったい何の研修だ…と言われてしま
いそうですが、どんな意味があると思われますか?

 アンケートに書かれるコメントは、学習者個々の学びの声とはいうものの、講
師の話をオウム返しにしているだけというものもあります。たとえば「目的を明
確にすることが大切です」といったような話をすると、そのまま、「目的を明確
にすることの重要性を学んだ」といった案配ですね。特に研修序盤では、そうい
った形が大部分を占めます。その時点では、まだ学びに対する主体性が低い状態
ですから当然といえば当然です。講師はこれらのコメントに対して、フィードバ
ックという形でレスポンスを返していきます。これについての詳細は省略させて
もらいますが、学習に対するコミットや動機付けを繰り返し、「学ぶ」という行
為そのものを深化させていくわけです。それによって、次第に学びが学習者にと
って主体的なものとなり、各々が自分なりに得たものを自分なりの言葉で表現す
るようになっていくのです。

 講座内容確認シートの記入は、少し大袈裟かもしれませんが、学習者が自分自
身と向き合う時間でもあります。元来、文章を書くという行為そのものが、自分
自身と向き合う行為なのですが、研修の仕組みとしてそういった場を設けている
のです。単純にいえば、PDCAを日々の学習にも取り込んでいるということであり、
「経験学習モデル」に照らしていえば、実際の経験から自分なりの知見を見出す
作業といえます。その日の取り組みから何を得、どう活かしていくかといったこ
とを抽出してもらうことで、学習効果を深めさせていくわけです。

 そのような省察を促すため、アンケートは「手書き」の形式をとっています。
学習者からすれば、PCを使って入力するほうが楽という人も少なくないでしょう。
集計や確認、記録化といった面でも、はじめからデジタルデータの方が合理的で
す。しかし、私どもの側から、講座内容確認シートをデジタル化するということ
は決してありません。入力という形式ですと、指先だけで書けてしまうというこ
とがあるんですね。実践から知見を見出し、次に繋げていくという大切なプロセ
スを、単なる入力作業で終えてしまうというのはあまりに勿体ない話です。
 手書きのコメントでは、デジタルにはない「人間的な行間」が存在します。内
容も勿論大切なのですが、使っている言葉、字面、勢いなどに様々な想いが潜ん
でいる。一枚一枚のアンケート用紙が実に表情豊かなんですね。研修が進みます
と、欄外で独り言を呟いたり、面白い私信を書いてくれたりすることもあります。
落書きというか、楽書きといったところでしょうか。こういう所にこそ、学習者
各々の実態がよく表れているように思います。

 迂遠になりましたが、表題の「お風呂に 3時間つかると水になる 下の方だけ」
は、私の新人研修を受講した学習者が書いた楽書きの一つです。俳句短歌などの
短詩型に則っているわけではないのですが、不思議と心に残る呟きではないでし
ょうか。一カ月半に渡る新人研修で、初めてのITシステム開発演習。プロジェク
トもいよいよ佳境に突入し、疲労困憊、まだまだ課題も山積み。そんな局面です
から、お風呂でもついウトウト…。身近な情景と豊かな写実性で、見事に情況を
表現しています。特に秀逸なのは、倒置法の「下の方だけ」でしょうか。単なる
不満や悲鳴ではなく、なんともいえない、おかしみとやるせなさが伝わってきま
す。いとおかし。
 多くの学習者が、ときにこういったユーモアのあるコメントを残してくれます。
いつも楽書きばかり…では困ってしまいますが、少なくとも何かしら楽しみなが
ら学んでくれている証拠だろうと思って安心することにしています。
 学習者のコメントは、数値上の満足度や理解度、点数では分からない学びその
ものに対する表情のようなもの。それをつぶさに掴み取ることが、結果的に、学
びへの動機付けと学びの深化に繋がっている。そんなふうに思うのです。

※ なお、今回紹介しました「お風呂に…」は、ご本人から承諾を頂き使用させ
ていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。


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 【2】 一期一会(おもてなしの心)
                 教育エンジニアリング研究所 和田 靖広
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 日本には「茶道」という文化があり、その中で一番重要なキーワードとして
「一期一会(いちごいちえ)」という考え方があることを、ある書物を読んで知
り、それ以来、私はこの言葉を自分の中でずっと大切にしてきました。

 「その場所、その瞬間での出会いや出来事は、2度と訪れることがない。そのた
 め、些細なことでもおざなりにせず、大事にしなくてはいけない」

 「茶道においての主人(もてなす側)は、客人に対して真剣にもてなし、客人は
 その意を汲んでもてなしを受ける。お互いがお互いを理解し、気を遣い、思いや
 ることで、適度な緊張が混じった、しかし心地良い時間を過ごすことができる」

 日々、仕事や生活に追われて過ごしている私にとって、せめて「今この瞬間」
だけは大事にしたいという気持ちで、この言葉を真摯に受け止めていました。
 そして、最近になってからですが、私たちが目指そうとしている研修でも、ま
ったく同じことがいえるのではないか、ということに気がつきました。

 企業研修の研修期間は、学校教育と違い、最短で1日、多くは2~3日程度と短
いです。比較的期間の長い「新人研修」でも1~2ヶ月といったところでしょう
か。
それに、研修修了後、同じ研修生と次に会う機会はほとんどないわけですから、
研修そのものがまさに「一期一会」なわけです。

 そのため、講師は、同じ研修は二度とないと心得て、研修を成功させるために
は手を抜かず、一生懸命その場に取り組む必要があります。
もちろん、講師が一方的に熱意や一生懸命さを示すだけではダメで、研修生にも
それがちゃんと伝わり、研修生もその熱意に応えて学習してくれる。そういった
場を講師が造り上げることが必要です。
 それがうまくいけば、研修に一体感が生まれ、どんどん雰囲気が良くなってい
きます。研修生が夢中になって学習に取り組んでいるうちに、気がついてみれば
(あるいは終わってみれば)、驚く程の知識と経験を得ることができている!学
んで良かった!…という結果になれば、研修は成功だと言えるでしょう。

 研修をやり始めた最初の頃は、こちらが熱意を示せば必ず研修生もそれに応え
てくれるという思いがあり、とにかく一生懸命に、真剣に、真面目に研修に臨む
ということしか頭にありませんでした。
 しかし、実際には必ずしもそれで研修がうまくいくとは限らず、私の熱意が空
回りしていることを自覚して、軽いスランプ状態に陥ったこともあります。

 そのようなときはどうすれば良いのでしょうか。私は、さまざまな方法を試み
ました。
これまで以上に率先して真剣さや熱血ぶりを態度に表したり、持っている知識や
名言を次々と紹介したりしました。それだけではなく、時事的な話題も取り上げ、
雑談やジョークを挟み、ある時はボケてみたり、わざと演習の邪魔をしたり、険
しい顔をしてみたり、あえて黙ってみたり、休憩時間に話しかけてみたり…と、
ほんの些細なことも含めていろいろな行動を考え、研修生にアプローチしてみま
した。
 もちらん、それで上手くいったときもあれば、上手くいかなかったこともあり
ます。ベテラン講師のなかには、こうしたことを私よりもはるかに上手くやって
のける人もいて、その真似をしてみたら、返って逆効果だったこともあります。

 こうして悩みながらも講師を続けていた私に、ある日、転機が訪れました。
ちょっとしたきっかけです。ひとりの研修生が私にこう話しかけました。

「先生、昨日は緊張していましたね」

 ちゃんと私(講師)を見てくれていたのです。それにハッと気付きました。

「あっ、バレていましたか」

 この瞬間、私の思いが(彼に)伝わったことが(私に)伝わって(周りにも)
伝わったのです。研修生の学習を助ける(支援する)のが私たち講師の役目なの
ですが、研修生に助けてもらって、さらに研修が生きるのだということを実感し
ました。

 研修生は、講師のことをとてもよく見ています。研修を成功させるために一生
懸命尽くしていれば、仮に表面上の不器用さや不手際が多少あったとしても、必
ず本意は理解してくれます。逆に、手を抜いたり、身の丈以上のことを話したり
すると、とたんに見透かされてしまいます。
 そして、「お互いがお互いを理解し、気を遣い、思いやることで、適度な緊張
が混じった、しかし心地良い時間を過ごすことができる」という『おもてなし』
の心を、講師と研修生が共有することである…というもっとも大切なことを、私
は研修生から学んだのです。

 あらためて「茶道」における「一期一会」「もてなす」ということを学び直し
た私ですが、ついでに分かったこともあります。「茶道」も、本来は、決して流
派や流儀にのっとり、先生の身振り手振りを真似て覚えるだけのものではないの
だろうな…ということです。

 まだまだこれからも研修の道は険しく遠いですが、日々精進していきたいと思
います。
その前に、メルマガ原稿が書き終わりましたので、熱~いお茶を一服。…ふぅ。


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