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Educe Club Newsのバックナンバー


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 『Educe Club News』【第9号】最後の宮大工
                            発行:2012.6.26
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 このメールマガジンは、教育エンジニアリング研究所及びアイボスのサービス
をご利用いただいたことのある皆様、各社が主催・共催したセミナー等にご参加
いただいた皆様、各社の担当者が名刺交換させていただいた皆様にお送りしてい
ます。
 皆様には、今後も継続的にメールマガジンをお送りさせていただきたいと思い
ますので、ぜひご愛読くださいますようお願い申し上げます。
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お手数ですが文末のご案内をご覧ください。

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 皆さん、こんにちは。

 本メールマガジンでは、人材育成や教育研修に関するテーマを中心に、人材育
成・教育研修についての最新トピックス、弊社の提唱する「教えない教育」の理
論や実践方法、教育研修の品質(効果)の測定・評価、OJTの活性化等、人材育
成プロフェッショナルの皆様に、役に立つ情報を配信していきます。

 また、将来的には本メールマガジンをメンバー(読者)相互の情報交換の場と
するとともに、いずれはメンバーがFace to Faceで、これからの人材育成や、教
育研修のあり方や方法等について議論し、助言し合い、相互研鑽するコミュニテ
ィ『Educe Club』に成長させたいとも考えています。

 本メールマガジンは、無料で月1回を目処にお届けしていく予定ですので、
末永くお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。

                       『Educe Club News』事務局


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 目 次
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  ■ 『Educe Club News』
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 【1】 最後の宮大工(「現代版徒弟制度」のすすめ3)
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 【2】 仕事量を最小にする技
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 【1】 最後の宮大工(「現代版徒弟制度」のすすめ3)
                         アイボス 國谷 裕行
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 このメルマガを続けてご覧頂いている読者の皆様には少々のご無沙汰です。3
ヶ月振りの寄稿ですが、題材は相変らず「現代版徒弟制度」です(「また~」と
言う声も聞こえるような気もしますが…)。
 「徒弟制度」という言葉から私の頭に象徴的に浮ぶ人物は「最後の宮大工」西
岡常一氏です。今日は西岡氏のことについて少し触れさせていただこうと思いま
す。
「最後の宮大工」西岡氏については共著を含めた彼自身の著書も多く、またNHK
プロジェクトXや映画でも取り上げられてご存知の方も多いと思いますが、私達
が注目し、共感するのは彼の寺社設計技術や施工能力ではなく、徒弟制度におけ
るリーダーシップ(棟梁としての能力)と人間形成(弟子育成)のユニークさで
す。そして最も強く共鳴する点が、「人間形成(弟子の育成)に最も良い方法は
教えないことだ」と語っている点です。この言葉は彼と彼の愛弟子である小川三
夫氏とが相互に確認しあい、実践している育成方針そのものですが(へぇ~、
「最後の宮大工」に弟子がいるんだー!!)、私達ibos、EE-Labが提供する教育
研修において常に心掛け、実践している「教えない教育」の考え方、やり方と金
環日食のように重なるのです。
 長くなるので残念ながら「教えない教育」の考え方、方法論の話については次
回に回すのですが、今回は西岡氏が実践してきた「徒弟制度」と「現代版徒弟制
度」の話に絞りますね。

 西岡氏は明治41年に代々からの法隆寺の宮大工棟梁の家に生まれ、小学校3年
生くらいの頃から既に宮大工棟梁としての英才教育を施されてきました。農業学
校を卒業して16歳で見習いにあがると、4年後には大工として独立し、法隆寺の
修理工事に参加しています。
 西岡氏は特に祖父から厳しい教育を受け、見習い時代に大工としての技能から
礼儀作法、生活習慣に至るまでみっちり仕込まれたことがその後の礎となってい
ます。祖父の意見で仕方なく農業学校に通ったことも、後に原木の見極めや地質
調査等において当時の知識が大いに役立ったようです。
また、母親も躾にはかなり厳しい人で、棟梁として使用人の苦しみを理解できる
よう、学業や見習いの傍ら、洗濯、炊事や後片付け、弟の子守り等の修行をさせ
ています。
 その後、彼は26歳の若さで法隆寺棟梁となり、戦争中二度に亘る応召受けなが
らもその間も法隆寺の金堂の解体修理を続けました。そして戦後は、その卓抜し
た技能と豊富な知識を持って明王院五重塔、法隆寺三重塔、薬師寺金堂・西塔等
の再建を棟梁として成し遂げています。
 西岡氏の略歴が長くなりましたが、上記のように彼の技術者として、棟梁(リ
ーダ)として、そして育成者(教育者)としての能力は、祖父や母親の厳しい躾
と愛情深い支援により自ら掴み取り、身につけていったものであるように思いま
す。

 さて、本稿の副題である「現代版徒弟制度のすすめ」は、この祖父や母親の厳
しい躾や教育をたどって、西岡氏の棟梁(師匠)への成長のプロセスを再現しよ
うという趣旨、考え方ではありません(もちろんこれを再現し得たとして、この
プロセスを辿れば全ての人が日本一の棟梁(師匠)になれる訳でもありません)。
西岡氏が自らを振り返り、その経験を省察し抽象化したものを「口伝」という形
で弟子に伝え、弟子自らがその意味を深く理解し行動するよう促す、そのシステ
ムを企業や組織の中に再び作り込んでゆくことが、知識、技術に加えて企業文化
やフィロソフィーの継承に有効であり、結果、組織の活性化、企業の生産性向上
に繋がると考えています。
そのため、「師匠」となる人は豊かな人間性、社会的・技術的経験に加えて、そ
の経験を抽象化する能力とこれを伝える技術を身につけなければなりません。
 この「経験を省察、抽象化して伝える」ということは、「マニュアル化して展
開する」こととは全く意味が異なります。徒弟制度では師匠と弟子が対面でこれ
を伝えることが原則で、言い換えれば双方が全人格をもって接することが前提で
あり、お互いに人間性を磨くことと共に相互の信頼関係がとても重要になります。

 ここまで語ると「現代版徒弟制度」は構築が難しく且つ効率の良くないシステ
ムのように思われますが、技能・芸能の世界、所謂「匠」の世界では現在でもこ
うした伝承、継承が行われてきている訳ですし、匠の世界(西岡氏のレベル)に
は至らずとも、夫々の企業・組織において伝承すべき経験や技術、文化を整理し、
これを伝える技術を持った師匠を作り出すことで、少なくとも企業体質は大きく
強化されてゆくものと考えます。

 少々観念的な話が長くなりましたが、前述の通り次回はこの「現代版徒弟制度」
を構築する際の考え方、方法論における一つの柱であり、我々の実践する教育研
修の軸足である「教えない教育」について触れたいと思います。


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 【2】 仕事量を最小にする技
                教育エンジニアリング研究所 木村 利明
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「私にはいくつかのメールアドレスがありますが、@の前は必ずslowhandです。
…そこにもの凄くこだわりを持っているのです」

 これが、研修やセミナーの開始時に使う、私自身の自己紹介パターンです。
「slowhandと聞いてピンと来た人はいらっしゃいますか?」などと、実際の場面
では2-Way(対話方式)で進めるのですが、それを全部書いていると、出だしだ
けで字数オーバーになりますので、そこは端折ることにします。
 slowhandはエリック・クラプトン(有名なギタリスト)のニックネームです。
そうです、私はクラプトンの大ファンなのです。…で、一応自己紹介は済むので
すが、それだけでは終わりません。英語をそのまま訳すと「遅い手」です。手の
遅いギタリストなんてのは、普通に考えるとダメですよね?…と続けます。
なぜ、手の遅い人が凄いギタリストなんでしょう???

 その理由について、ときどきとんでもないことを言う音楽評論家がいます。曰
く、「あまりに早弾きなので、かえって遅く見えてしまうのだ」とか、「早弾き
をするとよくギターの弦が切れる。その弦を張り替えるのが遅いのだ」
 …いやはやです(あれ?ひょっとして「いやはや」って死語ですか?)。
これは、「凄いテクニック=早弾き」という固定観念から離れられない…つまり、
(実際を知らずに)表面的で浅い見方しかできない評論家が(どの分野にもそう
いう困った人たちがいますが)勝手に思い込んでいる理由なのですね。
 彼が演奏している映像を実際にご覧になった方はお分かりのように、クラプト
ンは本当にゆったりと弾いています。それでも、聴いている人の心を揺さぶる、
凄まじいテクニックなのです。それが、彼が50年近くもの間、ずっと第一線で活
躍し続けているプロ中のプロである所以(ゆえん)です。

 これは、アジャイル(ajile)開発でいうところの「シンプルさ、すなわち仕
事量を最小にする技が不可欠である」を演奏の場で実現しているのです。
 私は、この仕事量を最小にする技を身につけるには二つの段階が必要だと考え
ています。一つ目は「その本質を知る」ことであり、二つ目は「訓練によってそ
の本質的な知識をスキルに変える」ことです。
 
 クラプトンの演奏は「泣きのギター」と称されたりしますが、その本質は「ブ
ルーノート(Blue Note)」です。ジャズやブルースのミュージシャンが大切に
している音の領域を示す言葉ですが、その音域は楽譜では表せません。
 でも、その定義は非常にシンプルです。「長3度(ミ)と長7度(シ)が下向き
にずれる」…ただそれだけです。
 ミとシは両方とも半音で次の音階にいけるのですが、そこをちょっと尻込みす
る感覚の音です。それが「悲しさ」とか「苦しさ」、「厳しさ」や「寂しさ」
「やるせなさ」を表現し、感動を呼び起こすのですね。そう、Bluesです。

 ギター演奏にはいろいろな奏法(テクニック)がありますが、最もギターらし
いテクニックといえば「チョーキング」です。ギターのフレットは半音ずつに区
切られているのですが、出すべき音よりも半音ないし1音(場合によっては1音半)
下の位置(フレット)の弦を押さえながら、その指をぐうっと押し上げて本来の
音を出す(弦の張りを強めて音程を上げる)奏法です。
 そうすれば、指をそこに置いたままで、弦を押し上げる指の力加減だけでいく
つかの連続した音が出せますし、半音よりももっと微妙な音(つまりブルーノー
ト領域)を奏でることもできるわけです。

 フレット間を超絶的な素早さの指の運び(運指)で演奏するのが「早弾き」で、
それはそれで凄くてカッコいいのですが、残念ながらブルーノートは表現できま
せん(はっきり言って、「艶」のないテクニックだけの演奏です)。
 クラプトンはそれとはまったく違う次元の弾き方をしています。その音楽の素
晴らしさに感動した人たちが、彼を賞賛する意味で捧げたニックネームが
slowhandなのです。

 これをプログラミングの世界に置き換えると、「ブルーノート」は「構造化プ
ログラミング」になりますね。その定理も本質ですから非常にシンプルです。
「入り口と出口を一つにする。そして、1.順次、2.選択、3.繰り返し(前判定)
という三つの基本的な論理構造ですべてを記述する」…もっと短く言えば「GOTO
文を排除する」…これだけです。
 そして、この本質を知った上で、自らを訓練しつつプログラミングスキルを向
上させていく。これが、仕事量を最小にする技を身につけるコツということにな
ります。
 訓練するのに最も有効なツールは、PAD(Problem Analysis Diagram)です。
入り口と出口は必ず一つにしなければなりませんし、優先順位(幹と枝葉)も明
確にしないと書けません。
 すなわち、「PAD」はギターにおける「チョーキング」に相当するわけです。
さあ、皆さん、しっかりと会得しましょうね。
 え?…何ですって?それってこじつけじゃないか…ですって?
 うー、そんなことはありません!…アナロジーですよ、アナロジー!!!


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