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Educe Club Newsのバックナンバー


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 『Educe Club News』【第8号】日本人と協調性
                            発行:2012.5.30
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 このメールマガジンは、教育エンジニアリング研究所及びアイボスのサービス
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ます。
 皆様には、今後も継続的にメールマガジンをお送りさせていただきたいと思い
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 皆さん、こんにちは。

 本メールマガジンでは、人材育成や教育研修に関するテーマを中心に、人材育
成・教育研修についての最新トピックス、弊社の提唱する「教えない教育」の理
論や実践方法、教育研修の品質(効果)の測定・評価、OJTの活性化等、人材育
成プロフェッショナルの皆様に、役に立つ情報を配信していきます。

 また、将来的には本メールマガジンをメンバー(読者)相互の情報交換の場と
するとともに、いずれはメンバーがFace to Faceで、これからの人材育成や、教
育研修のあり方や方法等について議論し、助言し合い、相互研鑽するコミュニテ
ィ『Educe Club』に成長させたいとも考えています。

 本メールマガジンは、無料で月1回を目処にお届けしていく予定ですので、
末永くお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。

                       『Educe Club News』事務局


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 目 次
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  ■ 『Educe Club News』
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 【1】 日本人と協調性
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 【2】 繰り返すことが力になる
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 【1】 日本人と協調性
                教育エンジニアリング研究所 原田 一敏
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 サッカーや野球で大きな国際試合が開かれると、日本では必ず「全員サッカー」
や、「チーム全員で…」といった言葉が多用されるようになります。そういった
言葉や、「和を以て貴しと為す」(聖徳太子)という精神にも象徴されるように、
日本人は、元来協調を好み、協力しあいながら結束を強めて物事にあたるという
志向性が強い民族といえるようです。しかし、いまの日本人というのは、本当に
協調性が高く、チームワーク力や連携力に優れているのでしょうか。

 人材育成に関わる仕事をしていると、様々な場面で、この「協調性」や「チー
ムワーク」、「コミュニケーション能力」といった言葉を見聞きします。「協調
性」とは、「異なった環境や立場に属している複数の者同士が、互いに助け合っ
たり譲り合ったりしながら、同じ目標に向かって任務を遂行する素質」をいい、
まさに日本人向きの資質といえそうです。最近では、エンプロイアビリティ(雇
用される能力)の主要な構成要素でも協調能力(対人関係)として挙げられてい
ますし、人材評価指針の一つとして重視している企業組織も多いことかと思いま
す。

 この「協調性」に関連して、2001年に佐久間賢氏(中央大学客員研究員)らが、
日米のホワイトカラー労働者を対象に興味深い調査を行っています。

「同僚を信頼できますか」
「自分の持っているノウハウや、得た情報をすすんで職場の仲間に教えますか」

 「協調ジャパン」の結果に期待したいところですが、残念!欧米では、「Yes」
の割合が8割を超えているのに対し、日本では、実に5割を切っているのです。
平素、協調性をウリにしてきた(はずの)お国柄にしては、すこし物哀しいもの
がありますよね。しかし、そう言われると、

「この人は<はたらく=はたを楽に>という感覚を持って仕事をしているなあ」

 という印象を受けることが、たしかに少なくなったと感じています。あくまで、
私個人の感慨ですが。

 要因としては様々なところにあるでしょう。社会全体で見れば、少子化や核家
族化の影響が大きいといわれています。他人と接したり人間関係で揉まれたりす
る必要性の高い時期に、十分な機会に恵まれず、協調性が養われなくなってしま
う。その結果、協調する価値や方向を見出せず、大人になってからも周囲と軋轢
をうみやすいといわれています。会社などの組織で考えると、成果主義の導入と
いうのが要因としてよく挙げられていますね。短期的な競争意識や成果は向上し
たものの、「自分さえ良ければ」という意識に走ってしまい、上記調査のように
同僚間で情報やノウハウを共有することがなくなる。お互いが自己利益を優先す
ることで、結果として全体の勤労意欲が低下するという問題も起きているようで
す。

 また、人間関係を深める機会がないといわれる一方で、携帯電話や様々なSNS
など、他者とつながる手段は、ますます増えてきています。これらの価値を否定
するわけではありませんが、いうまでもなく効率的にコミュニケーションをとる
ための一手段に過ぎません。そして、効率的なものが必ずしも効果的であるとは
限らないように、こうしたつながりが協調性の向上へと結びついていくと考える
人は少ないでしょう。それどころか、かえってつながりの渦に埋もれて、柵(し
がらみ)となり、協調性やコミュニケーションを阻害しているようにも見えます。
…そういえば、「コミュニケーション」という言葉が氾濫する一方で、「縁」と
いう言葉を聞くことがめっきり少なくなった気がします。そういったことも、な
にか、どこかで関係していそうです。

 協調性を向上させるために必要なのは、集団や繋がりの中へ闇雲に押し込める
ことではなく、まずしっかりと独立性・自律性を研くことです。先の少子化とい
う話とは一見矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、集団に依存するこ
となく、自他をモチベートさせられるように仕向けていかなければなりません。
そもそも、自分の意見のない人が、他者の意見を聴き、それをちゃんと理解する
ことなどできるはずもないわけです。

 「一身独立して、一国独立する」(福沢諭吉)の言葉通り、自主、自制、そし
て自律のないところに協調性は生まれません。「自律」というのは、自分自身の
規範やルール、価値観を持ち、組織の価値観と整合性を図りながら、目的と手段
を考え、時には創りだして進んでいくことをいいます。自らをモチベートすると
共に、他者や、自らの所属する集団をモチベートしていくことができる力です。
通常、精神的自律性を高めていくためには、経済的自立や技能的自立というステ
ップを経ていきます。

 では、自律性は最後まで不要かと言われると、そうではないのです。自立を形
成する過程においても、自主や自制、そして自律が土台となっているのです。で
すから自立状態の如何に関わらず、自律性の核のようなものは、元来誰もが持っ
ていると考えられます。そして、その核が十分に研かれていなければ、自立が実
現していても精神的自律や協調性につながっていくことは難しい。それが昨今感
じる協調性の低迷の根底にあるのかもしれません。日本人が元来もっていた、自
立・自律精神と、強いチームワークを形成する力。『Educe Club』が先駆となっ
て、なんとか取り戻していければ…と思います。


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 【2】 繰り返すことが力になる
                教育エンジニアリング研究所 澤田 大輔
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 仕事を終えて家に帰ると8ヶ月になる娘が待っています。「ただいま」と言う
と娘が笑う様子を見てのことなのですが、「待っている」というのは、多分に主
観的な想いでしょうか。そんなことを想いつつ、妻とともにはじめての子育てに
日々、悪戦苦闘しています。

 今、娘は「はいはい」をして椅子のそばまで行くと、椅子の足を手で伝いなが
ら徐々に立ち上がり、腰掛の部分につかまって立つということができるようにな
りました。冷蔵庫であろうが、台所に立っている妻の足であろうが、床から手で
伝えることができるものなら、何でも掴まり立ちしています。1ヶ月ほど前まで
は、掴まり立ちしたまま動きが取れなくなり、そのままひっくり返って頭をぶつ
けたり、泣いて助けを求めたりしていたのですが、今では膝を折り曲げて、お尻
から軟着陸することを覚えて頭をぶつける頻度も少なくなってきました。

 娘を見ていると、手で掴むというのはわりに早くからできていて、生まれて間
もない頃でも、彼女の手に私の指を当てれば掴むことをしていました(見た目に
は反射的な感じでした)。だんだんと自分から物を掴むようになってきたのです
が、はじめの頃は掴んでも振り回すだけでした。徐々に口に持って行きたいとい
う様子が出てきたのですが、あらぬ方向に行ってしまい、また、手を動かす早さ
を調整できずに自分の顔にかなりの勢いで物をぶつけていました(ちょっと痛そ
うでした)。いまでは、比較的ゆっくり口元まで物を運ぶことができるようにな
り、何でも口に持っていってしまいます(因みに、大好物はティッシュです。自
分で箱から引き抜いて食べています)。
 私がコーヒーを飲もうとしてカップを掴んで口元まで持っていくことができる
(幸いにも私は、娘よりよっぽど上手くできるのですが)のは、脳の中にある
「ストリアツム(線条体)という場所が関係しているのだそうです。そして、な
んとこれは、無意識で行われているのです。

 「ストリアツム」は大脳皮質と視床、脳幹を結びつける大脳基底核にあって
(脳全体の中心内部やや下の方でしょうか)、身体を動かすために発達したのだ
そうです。物を掴むときにスムーズに動作できるのも「ストリアツム」のおかげ
です。コーヒーの入ったカップを掴むためには、身体の様々な筋肉を協調させて
動かす必要があるのですが、どのタイミングでどの筋肉にどのくらいの負荷をか
けて…とかを考えずに、スッと自然に手を動かすことができるのは、ストリアツ
ムが何十という筋肉の細かい動きを厳密に計算しているからなのです。しかも
「ストリアツム」は正確無比で計算ミスをしないのです。だから毎回きちんとコ
ーヒーカップを掴むことができるのだそうです。

 元来、身体を動かすために発達したのが「ストリアツム」です。身体を動かす
記憶は、「手続き記憶」と呼ばれるそうで、大きく二つの特徴があります。

 一つ目の特徴は、無意識ということです。無意識の「ストリアツム」が綿密に
膨大な計算をして、その結果(答え)だけを教えてくれるので掴むことができる
のです。でも、無意識下で行われているために、その計算過程は一切わかりませ
ん。

 二つ目の特徴は、訓練で身に付くということです。掴むという動作を何度も繰
り返し訓練して記憶するから、スムーズに掴めるようになるのです。自転車に乗
るのも、野球のバットを振るのも、一回やっただけでは絶対に覚えられなくて、
何度も繰り返すことで覚えることができます。繰り返しているうちにその記憶が
「ストリアツム」に回路として形成されるのだそうです。

 この「手続き記憶」の特徴は、「直観(intuition)」にも当てはまるそうです。
そして、なんと、「直観」にも「ストリアツム」が働いているのです!!。道を
歩いていて、「あのレストラン美味しそうだな」というのも直観です。
「直観」は以外に正しくて、本人には理由がわからないのに、なぜかあたってし
まうものです。なぜ理由がわからないかというと、答えを導く計算過程がすべて
無意識でなされている。本人は計算しているなどとは思っていないけれど、無意
識のうちにものすごく厳密な計算をやっていて、答えだけを得ることができる。
なので「直観」は正しいのだそうです。訓練によって身に付くという点も同じで
す。

 実力ある有名な棋士の方は、将棋を指すときに手を読んで指しているのだそう
ですが、それでも中盤は手が読めないことが多い。そんな時は、なぜかわからな
いけれど、次にこの手が良いのではないかというのが浮かんできて、その通りに
指していくと勝ってしまうのだそうです。これは、小さい時から盤面を見て訓練
しているからできることなのです。そして、持ち時間のほとんどは、それを逆算
して、検証しているのに使っているのだそうです。

 仕事をしていると、問題の核心や解決手段を即座に答えられる方に出会います。
仕事のできる方は、無意識の部分が非常に良く鍛えられているのではないでしょ
うか。「直観」という能力も無意識の部分を訓練することで備わるという事実は、
その能力差に途方もない開きを感じている私にとって、訓練すればすこしでも近
づくことができるということで、ちょっとだけ元気の出る話です。

参考図書:「和解する脳」 著者:池谷裕二・鈴木仁志


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