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Educe Club Newsのバックナンバー


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 『Educe Club News』【第6号】研修生が主人公
                            発行:2012.3.21
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 このメールマガジンは、教育エンジニアリング研究所及びアイボスのサービス
をご利用いただいたことのある皆様、各社が主催・共催したセミナー等にご参加
いただいた皆様、各社の担当者が名刺交換させていただいた皆様にお送りしてい
ます。
 皆様には、今後も継続的にメールマガジンをお送りさせていただきたいと思い
ますので、ぜひご愛読くださいますようお願い申し上げます。
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 皆さん、こんにちは。

 本メールマガジンでは、人材育成や教育研修に関するテーマを中心に、人材育
成・教育研修についての最新トピックス、弊社の提唱する「教えない教育」の理
論や実践方法、教育研修の品質(効果)の測定・評価、OJTの活性化等、人材育
成プロフェッショナルの皆様に、役に立つ情報を配信していきます。

 また、将来的には本メールマガジンをメンバー(読者)相互の情報交換の場と
するとともに、いずれはメンバーがFace to Faceで、これからの人材育成や、教
育研修のあり方や方法等について議論し、助言し合い、相互研鑽するコミュニテ
ィ『Educe Club』に成長させたいとも考えています。

 本メールマガジンは、無料で月1回を目処にお届けしていく予定ですので、
末永くお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。

                       『Educe Club News』事務局


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 目 次
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  ■ 『Educe Club News』
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 【1】 研修生が主人公
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 【2】 プロフェッショナルの作法
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 【3】 「雪国の人材育成論」(「現代版徒弟制度」のすすめ2)
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 【1】 研修生が主人公
                教育エンジニアリング研究所 尾関 昇
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「お~。動いた~。」「やった!できた。」
「なるほど!そういう事か。」

 今日も研修室ではこんな声が聞こえてきます。序盤であれ終盤であれ、達成感
を味わっている研修生を見るのは嬉しいものです。そんな風景を見ている内に、
ふと「TVゲームと同じだな・・・」と思う時があります。

 最近の子供たち(子供に限りませんが)はゲームに触れることが多いと思いま
す。今ではTVに限らず携帯電話なんかにもアプリで搭載されています。最初は弱
かった主人公をコツコツと育てて悪の大王をやっつける!どうやったら高得点を
出せるか?!楽しみ方は様々だと思います。

 最初は操作方法もおぼつかないのでゲーム内で色々覚えていきます。何か一つ
操作を覚える度に「よくできました!」と褒められます。小さな成功体験が続く
のです。ゲームを進行させることによって自然と体が覚えていきます。しばらく
進めていくと必ず強敵や難関ステージが出てきます。ここで大概は負けたり、ク
リア出来なかったりします。失敗体験です。ここでやっと調べたり、弱点を見つ
けたり、解決方法を模索し始めます。試行錯誤して乗り越えた瞬間にまた達成感
を味わう…。良く出来ているなぁと思います。

 もう一つ感心してしまうのが、子供たちがゲーム内の技やテクニックを驚くほ
ど覚えているということです。キャラクターの名前なんか当たり前で、ストーリ
ーのどの段階で何が…という細かな部分まで覚えているのです。学校で習う内容
はほとんど覚えてないのに。何故でしょう?

 理由は簡単です。「面白い」からです。興味を引く内容になっていれば、プレ
イヤーは勝手に勉強し、成長していくのです。「ゲームはゲームだからでしょ。」
なんて声も聞こえてきそうですね。果たしてそうでしょうか?ただ一方的に方程
式や英単語を教えられ覚え続けることが面白いでしょうか?子供たちは口を揃え
て言うと思います。「つまらない」と。

 メルマガ第2号の木村先生の文章の中で出てきました「伝説の98歳灘校教師 
橋本 武さん」は、「銀の匙」を3年間かけて読むという授業をされています。
物語の中で駄菓子を食べる文章が出てくれば、同じ駄菓子を食べながら読み、食
感や味の表現を自分が感じた感覚と比べてみる。凧上げの場面があれば凧を作り、
作り方や構造を調べながら実際に上げる…。主人公と同じように追体験をさせな
がら、「学び」への興味を引き出していく。ただ単に物語をなぞるだけではなく、
表現や言葉に関わる事柄を自分達で調べ、自分達の言葉で表現させていく。様々
な横道に逸れながら、追体験の中で「気づき」を促していく。

「押しつけじゃなくて、生徒が自分から興味を起こして入り込んでいくためには、
“主人公になりきって読んでいくこと”が必要。」

 こんな授業だったらきっと色々なことに知的好奇心が刺激されて、単に知識と
いう部分以外にも影響を受けたと思います。実はこの「表現や言葉に関わる事柄
を自分達で調べ、自分達の言葉で表現する」勉強法はフィンランドでは「カルタ
式学習法」という名前で古くから使われています。そして、フィンランドはOECD
が行っているPISA(学習到達度調査)において毎回上位に入っている国です。

 やや話が違う方向へ向かいましたが、学校で「つまらない」授業を長々と受け
てきた研修生たちが、今までの学校と同じようなスタイルの研修で「面白い」と
感じるでしょうか?

 研修の内容も講師のスキルも工夫と鍛錬が必要だと思います。
あくまでも「学ぶ」のは研修生で「主人公」です。彼等が自ら学んでいくよう
に仕掛けや気づきを与えていくのが講師ではないでしょうか。

(参考文献:「奇跡の教室」伊藤氏貴著)


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 【2】 プロフェッショナルの作法
                教育エンジニアリング研究所 松本 泰実
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 今回は、坂井三郎について取り上げたいと思います。第2次世界大戦の海軍の
戦闘機のエース・パイロット(撃墜王)として知られる人物です。撃墜王と呼ば
れる人たちは、おおよそ戦死することがほとんどで、坂井氏のように、終戦まで
生き残ることは、まれな例と言うことが出来ます。自らのテクニックでコントロ
ールできる以上のリスクを冒さないと成立しない特殊な職業ということでしょう
か。

 坂井氏は、要素技術としての操縦術が優れていることは、書くまでもありませ
んので割愛します。それを除いた特徴として、非常に正確な記憶力(単純な記憶
力ではなくエピソード記憶)があります。多くの場合、戦闘後の記憶が曖昧であ
ったり、話に尾ひれが付いたりする例がほとんどです(武勇伝とはそういうもの
でしょうが)。戦闘を想定し(仮説)練習を重ね、戦闘後はそれを正確に振り返
り(検証)を上達に繋げていったということでしょう。
「ゼロ戦の秘術」という本の中で、坂井氏の記憶をもとに、シミュレーター上で
坂井氏の飛行を再現し検証していますが、恐ろしく正確な記憶であったと記され
ています(「ゼロ戦の秘術」では、航空機の設計者が坂井氏にインタビューをす
る形式で進行している。航空機の設計を検証するシミュレーターをパイロットの
話の確からしさを検証する道具をして使うのは非常に珍しい)。

 この仮説と検証は、非常に重要で、技術の上達には不可欠なものです。技術者
研修は、仮説と検証をいかに身につけさせるかが勝負になります。
すこし話は逸れますが、エンジニアのスキルを測るために面接を行うことがあり、
業務経歴書に基づいて質問をするのですが、内容を正確に思い出せる人は、意外
に少ないのです。思い出せないのであれば、経験とは言えず、経歴=経験とはな
っていないのです。

 これは、効率化を求めて、過度に分業化が進んだ副作用です。この憶えている
憶えていないは、自ら取り組んだか、やらされたか、ということが分かれ目にな
るようです。そうしてみると、本当に経験を積んだエンジニアがどれほどいるの
か心配になります。自ら取り組みシステムを完成させる研修は、疑似体験として
の経験となり、スキルアップに繋がっていくことは、非常に理にかなっていると
考えています。

 話を戻します。坂井氏はこの上達方法に裏打ちされたスキルが、撃墜王の名を
確かなものにしていったのは、どの本を読んでも分かることなのですが、それは、
他の撃墜王と差がありません。どうして坂井氏は生き残ったのでしょうか。
必殺技が特別に優れていたのではないか?私はそう考えていました。確かに「ゼ
ロ戦の秘術」には「左捻り込み」という技のことが出てきます。要約するとこう
です。「失速する寸前の状態を作り出し、それを利用して左に素早く回り込む」
ことなのですが、ピンときますか?もう少し解説します。当時の空中戦は、相手
の後に回り込んで、機銃で相手を落とします。相手より小さく回り込む技術が勝
負になるわけです。坂井氏は、毎日のようにこの「左捻り込み」を練習していた
そうです。
常に技量を落とさないように、鍛錬する取り組みは、プロ中のプロだと思わされ
ます。インタビューは終盤になり、「坂井さんは、実践でこの技を何回ぐらい使
いましたか?」という質問に「実践では、1回も使いませんでした」と答えまし
た。

 私の予想はみごとに裏切られました。本はここで終わっています。
ここからは、私の解釈です。必殺技は、非常に有効な手段には違いないのですが、
それが失敗に終われば、後がありません。これを使えば絶対大丈夫という技を身
につけて、それに油断せず繰り返し練習することに止まらず、必殺技を使わない
ようにマネージメントをしていたのです。理不尽なことが起こる戦場において、
生き残るということは、こういうことなのでしょう。

 この話は、新人研修の時によくする話の一つです。「上には上があるよ。もっ
と上を目指しなさい」というエールを送りたくて話すのですが、要素技術~スキ
ル~マネージメントが、点から線へそして面へと広がっていく開発技術のあり方
を表しているとも考えています。
受講生と苦労を共にし、一緒に考えて、講師も成長していく状況が作り出せるの
は、研修プログラムが開発の疑似体験であるからできることですね。


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 【3】 「雪国の人材育成論」(「現代版徒弟制度」のすすめ2)
                          アイボス 國谷 裕行
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 3月19日朝の会話です。

メルマガ編集長 「国谷さん、ちょっとした事故でメルマガ今月号の原稿に1本
穴があいてしまいました。スミマセン。」
国谷      「それは困ったねぇ、それで・・・?」
メルマガ編集長 「で、とりあえず国谷さんに穴埋めを・・・」
国谷      「え~っ!!?」 

と言うわけで、乱筆乱文ご容赦ください。

 メルマガ2月号で「現代版徒弟制度のすすめ」の話をしました。現代の日本企
業においては、仕事の仕方の「本質」を後進に伝える現代版「師匠」作りが急務
なのではないかと言う話です。これはもちろんその「弟子」となる人達に一定の
エンプロイヤビリティ(雇用される能力)が備わっていることを前提としていま
す。しかしながら現代の「師匠」たるものは「弟子」のその基礎能力の引き上げ
にもある程度の時間を割かなければならないのが現実です。 
 かつての師匠達は自分の背中を見せることによって、良くも悪しくも弟子達に
自ら考えさせ、悩ませ、時間を掛けて「本質」を体得させて行く、そんな人作り
が有効でした。しかしながら変化のスピードの速い現代においてはそんな時間の
余裕は与えては貰えません。仕事の(仕方の)本質を知らしめるには、その仕事
及び関連する一連の仕事の全体像、期待する成果物を明らかにして示す必要があ
り、その仕事に取り組む一貫した姿勢や考え方についてもある程度の示唆を必要
とします。

 バブル期のピークを少し越えた頃の話です。私の隣の課に社会人3年目で中途
採用したA君が配属されてきました。ご存知のように当時は日本中で人手が足ら
ない状況で、新卒新入社員は入社前に都内のホテルや東京ディズニーランドに軟
禁されるような状態でした。私のいた会社でも、ともかく「人」を連れてくれば
仲介した社員にさえも薄謝が出る次第です。そんな中、中途入社とはいえろくな
入社教育も受けずに配属されたA君ですが、これがまた所謂「仕事が出来ない人」
の極論のような男でした。
余りの使えなさに業を煮やしていたB課長が、ある日A君に不急の仕事を指示しま
した。

「今日は午後から倉庫に行ってカタログの在庫チェックをしてきてくれ。そこそ
こ時間も掛かるから、チェックが終ったらそのまま家に帰ってもよろしい。報告
は明日の朝で。」

と言ってカタログのリストを渡したそうです。
早速翌朝、B課長はA君を呼んで報告を聞きました。

B課長 「カタログの在庫は全てチェックして来たか?」
A君  「はい。」
B課長 「で、報告は?」
A君  「はい、カタログは全てチェックして来ました。」
B課長 「それは分かった。で、それぞれの在庫数は?」
A君  「はあ、覚えてはいません」
B課長 「在庫を数えて来たんだろ! それぞれの在庫数は!?」
A君  「ですから、そのときは覚えていましたが、今はもう覚えていません。」
B課長 「???」
A君  {???}

 B課長はてっきりA君がサボって直帰したものと思い倉庫会社の係に確認の電話
を入れたところ、A君は19時位まで掛かって丁寧に在庫を数えて行ったとのこと
でした。
まるで作り話のように聞こえますが、当時実際にあった話です。
(その後A君はどうなったか、ですって? そう、皆さんのご想像の通りです…。

 もちろんA君のエンプロイヤビリティには著しい欠陥があります。ただ、そん
なA君を知っていたB課長の仕事の指示の仕方にも配慮が足りなかったのかも知れ
ません。在庫チェック(=在庫棚卸し)の意味と業務における位置付け、それと
ちょっとした段取りを示唆してあげればこんな笑い話にはならずに…??

 上記は、例え話としても極めて極端な例ですが、現代の職場における「師匠」
が後輩に新しい仕事、初めての仕事を指示する際には、その仕事の全体像と役割、
意味づけと価値観を伝え、少しばかりの段取りを示すことによって本人のモチベ
ーションが向上し、期待するアウトプットに到達する力となるのではないでしょ
うか。そしてこの小さな成功体験の積み上げが自己効力感を生み、更なる高みへ
挑戦しようというパワーの源になる。こうしたことの繰返しにより人は自ら学び、
学びを通して「本質」を知る力が身について行くのではないかと思います。
現代版徒弟制度の「師匠」には、細かい配慮(リーダーシップ)とその伝達スキ
ル(コミュニケーション)が要求されるのです。

 でも、それって現代の人に限って必要とされる能力ではないのですね!
「師匠」の人材育成への姿勢を語った二人の偉人の余りに有名な名言・格言を、
最後に書き添えます。

古くは250年前の名言、
 「してみせて 言って聞かせて させてみる」
 (上杉鷹山)

これを受けた100年前の名言、
 「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」
 (山本五十六)

上杉鷹山は米沢藩、山本五十六は長岡藩。う~ん、雪深き国の人材育成理論は実
に腰が据わって粘り強い!!


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