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Educe Club Newsのバックナンバー

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 『Educe Club News』【創刊号】これからの人材育成に求められるもの
                           発行:2011.10.11
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 このメールマガジンは、教育エンジニアリング研究所及びアイボスのサービス
をご利用いただいたことのある皆様、各社が主催・共催したセミナー等にご参加
いただいた皆様、各社の担当者が名刺交換させていただいた皆様にお送りしてい
ます。
 皆様には、今後も継続的にメールマガジンをお送りさせていただきたいと思い
ますので、ぜひご愛読くださいますようお願い申し上げます。
 メールマガジンの配信停止、配信先のメールアドレスの変更につきましては、
お手数ですが文末のご案内をご覧ください。

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 皆さん、こんにちは。

 この度、教育エンジニアリング研究所及びアイボスと共同で、「教えない教育」
の普及と教育研修の品質向上(効果の底上げ)のための情報提供を目的に、人材
育成の現場で活躍されている皆様(人材育成プロフェッショナル)に向けて、
メールマガジンを発行することといたしました。

 人材育成や教育研修に関するテーマを中心に、人材育成・教育研修についての
最新トピックス、弊社の提唱する「教えない教育」の理論や実践方法、教育研修
の品質(効果)の測定・評価、OJTの活性化等、人材育成プロフェッショナルの
皆様に、役に立つ情報を配信していきたいと考えています。

 また、将来的には本メールマガジンをメンバー(読者)相互の情報交換の場と
するとともに、いずれはメンバーがFace to Faceで、これからの人材育成や、教
育研修のあり方や方法等について議論し、助言し合い、相互研鑽するコミュニテ
ィ『Educe Club』に成長させたいとも考えています。

 このメールマガジンは、無料で月1回を目処にお届けしていく予定ですので、
末永くお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。


                   株式会社教育エンジニアリング研究所
                       代表取締役社長 木村 利明

                       株式会社アイボス
                       代表取締役社長 國谷 裕行


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 目 次
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  ■ 『Educe Club News』
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 【1】 これからの人材育成に求められるもの
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 【2】 教育の世界で起きている不思議なこと
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 【3】 教えたい講師の幻想
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 【4】 受講者が成長する要因とは?
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  ■ 事務局からのお知らせ
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 【5】 『レッスン・デザイン実践力強化コース』のご案内
     『OJTリーダー・OJTトレーナー養成Essentialコース』のご案内
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 【1】 これからの人材育成に求められるもの
  ~従来の精神論(KKD)だのみの“人材育成”ではもはや人は育たない~
                         アイボス 國谷 裕行
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 東日本大震災の発生から早くも7ヶ月が経過した。いまだに瓦礫の山も散見さ
れる被災地の方々には心よりお見舞い申し上げるとともに、一刻も早い復興、
再生をお祈りしたい。
 今回の震災は、その再興に当たって私達に考え方、価値観の大きな変更を迫っ
ているように感じる。高さ10m超の世界一の防波堤があっさり崩れ去るさまは、
「次は30mを超える防波堤が必要だ」といったような従来の延長線上での議論、
ものの見方を否定しているように思われる。

≪過去の成功体験が、時に障害になる≫

 この「従来の延長線上における限界」は、今日の日本の企業・組織が抱える問
題点と重なるのではないだろうか。かつてない範囲、深さ、速さでの変化が常態
化している現代においては、過去の成功体験がむしろ改革・変革の邪魔をするケ
ースが発生する。
 人材育成の現場においても、「オレの若い頃は…」とか「自分の経験によ
ると…」といった自己流の、ある種精神論的な方法論で、教育研修やOJTを
押し通す先輩や上司を目にすることがある。もちろんこれまでの方法論や経験を
一概に否定するつもりはない。しかしながらこうしたものの多くは、かつての終
身雇用に支えられた工業化社会時代(画一性が高く変化の少ない時代)に適合し
たやり方である場合が多い。
(実は私自身も工業化社会全盛時代に育った人間なのだが…。)
 かつての人材育成は「人づくり」的な性格が強く、それ自体に明確な目的や目
標を持たずとも、ピラミッド階層の組織形態の中でそれぞれが落ちこぼれない程
度に育っていればそれで良かった。しかしながら技術革新が早く、常に新しい商
品・サービス、市場、経営手法を開発しなければ企業の存続が脅かされる今日に
あっては、これまでにない発想、これまでにない技術や方法論を駆使して課題解
決に当たる人材の育成が不可欠なのである。

≪人材育成担当(人事・教育担当者)に求められる能力≫

 企業が競争優位を維持するために継続的な人材育成が欠かせないのであれば、
人材育成は経営のニーズから明確な目標を与えられ、組織的且つ戦略的に取り組
む企業活動の一貫でなければならない。
その中で、組織上人材育成を直接担う人材育成担当(人事・教育担当者)は、そ
の実行のためにどのような能力を備えておくべきであろうか。
 人材育成担当に望まれる能力は、これをKKD(勘・経験・度胸)に頼ることな
く、計画的、体系的且つ継続性を持って押し進めるリーダーとしての能力であろ
う。言い換えれば科学的な根拠に基づいて計画的な育成を推進する能力である。
そのためには経営や経営戦略はもちろん、教育学、教育工学、心理学、統計学等
における教育や、学習についての理論や知見、方法論を学び、有効と思われる内
容を自ら実践を通して(行動することで)検証しながら、「マイセオリー」とし
て紡いでゆく必要がある。 

≪効果的な「教育」(仕事における学び)≫

 「教育」と「学習」とは本来異なる概念である。それぞれの定義はここでは省
略するが、例えて言うとセミナーや研修受講という「教育」だけで「学習」が実
現する訳ではなく、ここで得たものに業務の中での実践知、あるいは上司・先輩
の指導といった要因を組み合わせて初めて効果的な「学習」が可能となる。別の
言い方をすればOff-JTにより身に付けた技術・知識・スキルを、OJTを通して現
場の実践に適用し、その検証を行うことによって学習が成立する。
つまり、ある目的のために組織や個人がすべきことが学習(活動)であり、そ
れを支援するために人材育成部門等ができることが教育(活動)である。教育と
は「学習を効果的・効率的に実現するための支援活動」であり、人材育成活動の
主体はあくまでも学習者なのだ。
 人材育成活動の主体が学習者による学習活動であるならば、最も効果的・効率
的な教育(支援活動)は「如何にして“仕事を通して学ぶ”環境を整えるか」に
集約されるのではないだろうか。
「仕事の中の学びこそ本来の姿」という考え方は、状況主義を主張したジーン・
レイヴとエティエンヌ・ウェンガーによって「正統的周辺参加理論」として提唱
されており、人材育成担当の方には是非興味を持っていただきたい。
(理論は複雑で、関連分野も多岐に亘るが…)
 同理論はあくまで概念であり、その中に効果的な教育のための処方箋が示され
ているわけではないものの、今日の企業の人材育成のあり方に大きな示唆を与え
てくれるだろう。

≪これからの人材育成担当(人事・教育担当者)のミッション≫

 かつて人材育成は人事管理の一貫であり、管轄下にあった。従ってそのミッシ
ョンも人材育成が管理、コントロールされた状態に置かれていることであった。
 しかし、現代の人材育成が前述のような「企業活動」である以上、人材育成担
当は社員の知識・スキルの習得だけでなく、彼らが業務(現場)の中で何が出来
ているか、それにより現場にどんな変化をもたらせているか、所謂コンピテンシ
ーの発揮度に至るまで意識を向ける必要があろう。
 このことは、人材育成担当がこれまでの守備範囲を越えて現場の成果、現場の
生産性にまで踏み込むことに他ならない。人材育成担当が教育・研修の専門家で
あることは大前提として、それに満足し、そこにとどまることすら許されない。
加えて「OJTの機能低下」が叫ばれる昨今、現実にこうした課題を抱えた企業で
は特に緊急を要する。
 人材育成担当が経営(マネジメント)や教育に関する高度な専門能力を身に付
け、自律したプロフェッショナルとして、業務の現場と協調して行動すること無
しに、企業のこれからを担う人材はもはや育たないのである。


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 【2】 教育の世界で起きている不思議なこと
                教育エンジニアリング研究所 木村 利明
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 教育の世界には、どうにも不思議なことがあります。
 それは、間違いなく学習効果があるとされている教育理論やその方法論が、教
育現場ではさっぱり取り入れられていないことです。
 もちろん、(少数ではありますが)一部の教育者はそれらを実践し、歴然とし
た学習効果があることを実証してみせています。それにも関わらず、大多数の教
育者(および教育関係者)はそのやり方を取り入れようとはしません。

 今、もっとも話題になっている例を取り上げてみます。

「あなたは路面電車の運転手です。路面電車は猛スピードで進んでいてブレーキ
が故障しています。前方には5人の労働者がいて、そのまま行けば5人とも死ん
でしまいます。しかし、そこから避ける線路があり、そこには1人の労働者が働
いている。あなたはハンドルを切りますか…?」

 これは、サンデル教授の対話型講義「正義(Justice)」の中の一節です。昨
年(2010年)、「ハーバード白熱教室」という番組タイトルで12回に渡りNHK教
育テレビで放映されて大反響を呼びました。講義を元にした本もベストセラーに
なっていますので、ご存知の方も多いのではと思います。

 学習者に対して一方的に教えるやり方を「1(one)-Way」方式といいます。
直訳すれば「一方通行」ですね。少し考えれば誰でも分かることですが、この方
式はいわゆる「知識の詰め込み」であり、学習効果を上げることに自ずと限界が
あります。したがって、「1-Way」方式を「2(two)-Way」方式(双方向つ
まり対話型)に改めるべきである…いうのは、もともと良識ある教育者の常識で
もあったのです。
 最近よく耳にする「ラーニング・ファシリテーション(学習の支援と促進)」
も、その最も基本的なスキルは、この「2-Way」(対話=インタラクティブ=
ダイアローグ)が教育の現場で実現できることです。

 でも、これだけサンデル教授が話題になるということは、「対話型講義」をし
ている教育者が希少(少数派)だということに他なりません。
 なぜ、大多数の教育者はやろうとしないんでしょう?
「哲学という抽象的な学問領域だからできるんだよ」とか「ハーバード大学の学
生が優秀だからこそ成立するんだ」という声が聞こえてきそうですね。他にも
「そんな効率の悪い授業は許されていない」「学生の発言によって収拾がつかな
くなってしまったらどうするんだ」など、懸念や「やらない」理由がいっぱい出
てきそうな気がします。

 これについての結論を言っておきますが、「対話型講義」ができないことに学
習者側の都合や責任は一切ありません。ひとえに教育者側の問題です。教育者が
「2-Way」方式の授業を展開すれば、必ず学習者はそれに反応します。
 ただ、その反応を劇的なレベル(白熱教室)にまで引き上げるには教育者側に
それ相応のスキルと準備が必要です。ただ単純に学習者と対話すれば済むという
ものではありません。
 なぜ「正義(Justice)」の話をするのに「路面電車の運転手」が登場するの
でしょう…別に「路面電車の運転手」を育成するわけではありませんよね。これ
は「ケースメソッド(Case Method)」という実際の事例研究を重視した教育方
法を併用することによって学習効果を高めているわけです。大勢の学生の前で授
業を展開するのも、「グループダイナミックス(Group Dynamics)」(協調学習
における集団力学)を応用しています。
 サンデル教授がどこまでその方法論を意識しているかどうかは分かりませんが、
他にも活用している教育手法や方法論があります。それらの詳細については、ま
たいずれかの機会にて…。

 タイトルを「教育の世界で起きている不思議なこと」としましたが、実は不思
議でもなんでもありません。明らかに効果があるというのに、その教育方法が取
り入れられない最大の理由は、教育者(と教育関係者)の大多数がこれまでの教
育に「馴れ切って」しまっているからなのですね。
 これまでと違う教育方法を取り入れるには相当の覚悟が要りますし、他がやっ
ていないのにわざわざ自分が率先して苦労することはない(こういうのを工業社
会特有の「横並び意識」と言いますね)…というのが本音のところであり、
実情でもあるのです。

 もちろん、新しい教育方法に対する無知もあるでしょう。しかし、その「無知」
も含めて、厳しく言えば、教育界全体が「怠慢・怠惰」に陥っています。
 しっかりした根拠もないのに「安全なのだから安全」と言い、長年、共通の利
害と既得権利の上にあぐらをかいてきた大勢の「原発」関係者(官・政・財・学)
と同じ図式の中にいるとも言えます。
 今まさに「日本全体が変革期である」という切実な声がそこら中に沸き起こっ
ていますが、教育の世界こそ、真っ先に(手遅れにならないうちに)変わらない
といけないのではないかと思っています。


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 【3】 教えたい講師の幻想
                教育エンジニアリング研究所 澤田 大輔
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 教えれば学習者はわかる。講師はそう思い込んでしまいます。しかしながら、
これは幻想でしかないようです。
 講師にとって研修中は「教えたい」という誘惑に満ち満ちています。これもそ
の一つ。

「C言語がよくわからないので、プログラムを作ることができなかった。もっと
教えて欲しい。」

 これは、IT技術者の新入社員研修で毎日書いてもらうアンケートで研修生がし
ばしば書いてくるコメントです。C言語というのはプログラミング言語の一つで、
IT技術者はプログラミング言語を使ってプログラムを作らなければなりません。
この研修生(学習者)は、プログラムが作れないのでプログラミング言語をもっ
と教えて欲しいと訴えています。
 このアンケートを読むと講師は、学習者の「わからない」というコメントに反
応して、プログラミング言語を教えたくなってしまうのです。次の日の研修で
「変数とは…」(プログラミング言語を解説している多くの本はここから始まり
ますので)と半日講義をする誘惑に駆られます。この誘惑に負けて教えてしまう
とどうなるか…。学習者は、もっとわからなくなってしまう。というと信じても
らえますでしょうか。
 それでも、教えれば学習者がわかる(プログラムが作れるようになる)と思っ
てしまうのです。

 教えたい誘惑に駆られた時には、自分がどのようにして自転車に乗れるように
なったのかを思い出してみます。
(自転車とIT技術ではレベルが違うとお考えになるかもしれませんが、学習者の
学習としては本質的に同じことだと捉えています)
 どうだったでしょう…。とにかく乗っては転ぶの繰り返しでした。その時に乗
り方を教えてくれた人は何をしていたか、後ろで荷台を押さえてくれたぐらいで
した。自らで体得することの手助けをしてくれただけだったのです。
 講師とは不思議なもので、自らが体得したことであるのに、テキストを眺めそ
こに書かれている内容を教えようとしてしまいます。結果として、自転車の構造
や原理を教える、それを教えれば学習者が「自転車に乗れるようになる」、教え
て乗れなければ、教える内容が足りなかったと思い(あるいは、教え方が悪かっ
たと思い)、さらに微細に(あるいは手を変え品を変え)構造や原理を教えたく
なってしまいます。自らは体得したことを忘れて、「教えれば自転車に乗れるよ
うになる」という幻想に取り付かれてしまうのです。

 著書「ティーチングからコーチングへ」(著者 日野公三)に興味深いことが
書かれています。明治の時代に「エデュケーション」という言葉を福沢諭吉は
「開智」と訳したそうです。educateの語源は「外へ導く」=「能力を引き出す」
だそうです。「智を開く」とは、学習者の持つ潜在的な能力を引き出すというこ
とで、素晴らしい言葉に思えます。「教え育てる」という視点ではなく、学習者
が本来持つ能力をいかに引き出すかというのが学習支援者(講師)の役割だと…。
学習者は「自ら学び、主体的に問題を解決する力を持っている」ということが本
当に信じられるかどうかが鍵となるようです。これは、研修を通してつくづく実
感できることです。

 学習者(研修生)の「教えてください。」という「言葉(罠)」に、講師はう
かうかと乗ってはいけないのです。それは、学習者と講師が共同幻想(教えられ
ればわかる、教えればわかる)の中に入ってしまうのですから。
 「教えたい」という誘惑に駆られるたびに、小学生の頃、自転車を練習した空
き地の情景が浮かび、「お前、本当に学習者を信じているのかい?」という自問
が繰り返されます。幻想(妄想)から抜け出すのは厄介なことです。

(※妄想:真実でないものを真実であると誤って考えること。)


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 【4】 受講者が成長する要因とは?
                  教育エンジニアリング研究所 尾関 昇
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 教育研修の講師をやっていく中で、「講師をやっていて良かった」と思える大
きな要因の一つに、「受講者の成長」があります。それを引き出すのが講師の仕
事でもあるわけですが、研修が終わったとき、講師自身も、受講生自身も「成長
できた」と実感できるのは非常に嬉しいものがあります。

 「成長」といっても、様々な側面があるわけですが、特に新人研修において大
きく成長したと感じられる点はコミュニケーション能力です。世間では、コミュ
ニケーション研修といった単独の講座がありますが、弊社の研修では、そのよう
に独立してコミュニケーションを学ぶわけではありません。 にもかかわらず、
コミュニケーションスキルが大きく成長します。その理由はどこにあるのでしょ
うか。

 ご存知の通り、日本の教育は詰め込み型教育と呼ばれた時代から若干の変革が
あったものの、本質的には何も変わっておらず、「覚えること」が学ぶことにな
っています。さらに昨今の簡単に必要な情報が手に入る情報社会で生きてきた彼
等の頭には膨大な知識が入っています。社会や生活が豊かになると共に、個々人
の能力は非常に高レベルになっているにも関わらず、実際の研修現場では例年並
みむしろ例年よりもヒューマンスキルは低下していると感じます。

 特に最近は多くなってきたケーススタディ型の研修においては、そのヒューマ
ンスキルの低下傾向は顕著に感じられます。私どもの実施している研修もケース
スタディを用いており、5~7人程のグループで研修を進めていきます。
彼等から出てくる悩みは決まって「コミュニケーションが難しい」や「複数人で
仕事は難しい」などです。もちろん彼等は事前にヒューマンスキル研修も受講し
ていますし、グループワークも始めてではありません。

 今では国内普及率が頭打ちとなった携帯電話。これがヒューマンスキルの低下
の一因ではないでしょうか?若い世代は特にメール機能を多用しています。非常
に手軽な情報発信の手段であり、私も良く使います。しかし、メールには大事な
情報が欠けています。それは相手の表情です。会話においては話す内容の他にも、
相手の表情や仕草、口調や速さなどを判断して会話が成立します。そういう情報
を感じ取る部分が退化し始めているのではないでしょうか。

 話しが少し逸れましたが、読者の中には、「ヒューマンスキルは別で研修した
ほうが、効果が高い」と思われている方もいるかもしれません。しかし、仕事を
されている皆様はご存知の通り、コミュニケーションやヒューマンスキルといっ
たものは仕事の中で、独立して扱うスキルといった類のものではありません。そ
の時々で、周囲の状況や相手との信頼関係など総合的に判断し実践していくもの
であり、「○○を勉強したらこれができるようになる」というものではありませ
ん。
仕事を進めていく中の気付きによって、はじめて身に付いていくスキルだと思い
ます。

 私どもの研修では「仕事を進めていく中での気付き」をケーススタディに取り
入れて展開していきます。そこには、作成すべき成果物やスケジュール管理、作
業分担、メンバー間との折衝などありとあらゆるイベントが詰まっています。そ
れらをグループの問題として受講者自身に解決させていくのです。勿論、技術研
修である以上、コミュニケーション能力の成長だけではなくエンジニアとしての
要素も指導をしていく必要があります。しかし、「指導」と言ってもプログラミ
ングの文法を一字一句説明するわけではなく、方向性を提示し、一緒になって解
決法を考えていくだけです。講師は彼等がより成長できるようにきっかけを与え
て導いていくだけです。

 研修序盤では、今までの学校教育に慣れている受講者は受け身の姿勢のままで
す。しかし、研修終盤になると、人前で話しをするのが苦手だった受講者もメン
バーを前にプログラムの内部動作を流暢に説明していたり、はじめは喧嘩腰の口
調の受講者でも、最後には丁寧に会話をするようになったり、プログラミングな
ど全く知らなかった受講者がスラスラとコーディングしていたり…。最後には私
たち講師も驚くほどの変貌を遂げます。

 ケーススタディとは名ばかりの「ケースを学ぶ」ような、通り一辺倒の研修内
容では受講者を総合的に成長させることはできません。多種多様な人達の中でぶ
つかり合いながら学ぶことができるケーススタディを用意することで、受講者は
自然と学んでいきます。そして、研修を進めていく中で、時には失敗したり成功
したり、数々の経験を通して彼等は大きく成長していくのです。技術だけではな
く、ヒューマンスキルも伸びていくのです。
 学校と同じように「教える」ことをしていれば受講者はますます受け身になり
ます。あくまでも主役は受講者であり、私たち講師ではありません。「覚える」
研修から「考え行動させる」研修が今必要ではないでしょうか。


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 【5】 事務局からのお知らせ
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 『OJTリーダー・OJTトレーナー養成Essentialコース』のご案内
 [開催日:2011年11月8日(火)~9日(水)]
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 このコースでは、トレーニー自身の“気付き”を引き出す“教えない教育”の
実践をベースにOJTトレーナーとしての現場指導力を向上させると共に、複数の
職場におけるOJT現場を企画・マネジメントするOJTリーダーの「OJT企画・設計
及びフィードバック」のスキルについて、経験学習のモデルをベースにした演習
等により身につけていただくことができます。

 <詳細はこちら>
 http://www.iboss.co.jp/news/news_110822_1.html


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 『レッスン・デザイン実践力強化コース』のご案内
 [開催日:2011年12月21日(水)~22日(木)]
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 このコースでは、学習者自身の“気付き”を引き出す“教えない教育”の理論
と実践をベースに、その裏付けとなる教育工学・心理学、ID等の理論や知見、方
法論を折り込みながら、実践的なラーニング・コンテンツの作り込みを通して、
研修講師・社内講師としての研修の設計・開発能力を磨いていただくことができ
ます。

 <詳細はこちら>
 http://www.iboss.co.jp/news/news_110930.html


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 【『Educe Club News』バックナンバー】
 これまでに配信した『Educe Club News』のバックナンバーは、アイボスの
Webサイトでご覧いただけます。
 http://www.iboss.co.jp/merumaga/

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     〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1-36-3 東洋ビル6F
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